バスルームから出てくると、雅冶は腰にタオルを巻いたままピンクなベッドに寝転がって案の定、ピンクなケーブルTVを鑑賞していた。有線の「高原の朝」がつけっ放しで異様なミスマッチがランクアップしてる。こいつ、聴覚がおかしいのかな。
 僕が隣に座ると、「なんか飲む?」と聞いてくれた。
「雅冶は、なに飲んでるの? お酒?」
 三角形のカクテルグラスに半分くらい残った琥珀色の液体に、氷が浮かんでいるのを横目で見て、僕は尋ねた。すると雅冶はふん、って鼻で笑って、
「午後ティー。オレ、酒・タバコはやんねーの。健康に気を遣ってるから」
と言った。
「ふうん。僕は健康に気を遣ってないから、ピーチツリーフィズにしよう」
 僕が冷蔵庫を開けて缶を取り出すと、雅冶はちょっとあっけにとられたように目を吊り上げた。
「ゆっきー、やっぱオレより遊んでんな」
「どうかなあ? 僕、賭け事はやらないよ。ね、いくら儲かったの? おしえてよ」
「4万くれーかな…散々突っ込んでるから、ようやっとプラマイゼロってとこ」
「パチンコっておもしろいの?」
「さあね……競馬は面白いぜ。競馬場って行ったことある? 全部芝生なんだぜ。だだっ広くてすげえよ。それに、馬って結構カワイイんさ。レースに出るときは、髪の毛なんか編んじゃってオシャレだぜ」
「そうなんだ。今度連れていってよ、デートしよ」
「べつにいいけどよ」
 雅冶は眉間に皺を寄せて、怪訝そうに僕を見る。
「オレにそゆこと、言っちゃってていいわけ?」
「どういう意味?」
「だからおめー、真田とどうなんよ? んなヘラヘラしててオッケーなわけ?」
「なんだ、そんなこと心配してるの?」
 僕はすごくおかしくなった。大体、真田と僕はここで何もしてないじゃない。仲良くお話して、お昼寝して帰っただけじゃない。まあ、その前にちょっと大変なことになってるけど、あれはちょっと別だし。