やっぱり、呑気に延長なんかしてたのが馬鹿だったんだ。真田のくそ間抜けが起こしてくれないからうっかり6時まで寝ちゃって、延長料は折半にして(なんで何もしてないのに金払わなきゃいけないんだろ、ほんと馬鹿みたい)慌てて帰ったんだよね。帰るときはもう気分がダレてたから堂々と正面から出ちゃった。真田はぶーぶー文句言ってたけど。なら自分だってちゃんと4時になったら叩き起こせばいいだろ!「すやすや寝てたから起こしそびれた」って、なにそれ。大体、お前は僕が寝てる間ずっと何してたんだよ! あやしいよ。
 僕は考えられる限りの最悪の事態までを想定して雅冶に対抗しようとしたけど、急に気づいた。こんなの、全然平気。真田のせいにしちゃえばいいんだ。
「やだな、どこで見てたの?」
 僕が可愛らしく困ったふりをして言うと、雅冶はもっとにやにやする。
「やるじゃん、お前ら、あきれたね」
「だって、真田が強引なんだもん」
「すげえな、昼間っから。しかも部活サボって」
「内緒にしてくれる?」
 雅冶のつまらなさそうだった目が、結構真剣になってる。
「唐揚げ担々麺だっけ」
「安いな」
「餃子もつけちゃおっか?」
「ねー、オレにもさ、真田と同じの、おごってちょ」
 うっわ、そう来たか。でも、まあ、予想の範囲内。
 こいつならいいや、って思ったのはどういう理由からなのか、わからない。いつだってそんなこと、あまり深く考えない。一瞬だけ、あ、もしかして僕って、誰かに当てつけでこんなことしてるのかなって、冷ややかな考えが胸をよぎった。でも雅治のチャリの後ろに乗っかって、奴が「じゃ、いくぜ?」って言ってベルをちりりんと鳴らしたら、そんなのきれいさっぱりどこかへ消えちゃった。