携帯番号とかメアドとか、僕はわりとすぐ教えちゃう。面倒なら返事しなければいいだけだし。相手の名前なんかいちいち覚えてないから、適当にグループ分けしとく。「ナンパして落とした子たち」なんてグループ名は人に見られたらまずいから、絵文字で。学校の友達は鉛筆マーク。部活の子はスペード。もちろん、テニス部の子はちゃんと名前覚えてるよ。あれだけ長い間一緒に練習してれば、いくら他人に関心がない僕でも覚える。
 沢山友達がいる、っていうことは、沢山自分がいる、ってことと同じだよね。友達になるとき、自分の一面だけを見せる。別の子と友達になるとき、別の面を見せなきゃいけないから。そうやって僕は、ものすごいブリリアント・カットのダイヤモンドみたいに、自分でもわけがわからなくなるほどいろんな面を使い分けてる。たまに、それが破綻しそうになる。すごく無理があることは自分でも解ってる。
 あ。
 そうだ。真田にメールしよう。
 仁王雅冶が駅南のパチンコ屋にいるよ、なんて教えたらあいつ、怒り狂うな。すっごく面白い。真田のリアクションってほんと最高。大好き。
 あれ以来、真田が部活で容赦ない気がする。例の件について相談するときはなんか妙に優しいけど、その分コートで当たったときはすっごい形相で親の仇みたいに馬鹿力で打ち込んでくるから、結構頭にくる。僕とあいつだと、多分コントロールは僕のほうがちょっといい。でも、悔しいけどパワーじゃ絶対勝てない。身体の出来が違うもん。あいつ、はっきりいってちょっとスゴイよアレは……
 ……変なこと考えちゃった。こんなとこで。ちょっぴり頬が熱くなる。
 真田は僕の「落とせなかった子たち」のグループに入れてやった。光栄に思えよ。きみのマークはハート。メンバーはきみひとりさ。
 僕の唯一の味方で、唯一の真の敵。
 憎たらしくて、とても好きだ。