じきに雲は夕闇の紫に染まっていきます。ふたたび、彼の前に道をふさぐ者たちが現われました。
「よう来たのう」
「こんばんは」
 先に言ったのは銀の髪をうなじでくくり、灰色の衣を身にまとった僧侶です。氷のような目をしていました。隣に立つ眼鏡をかけた司祭は、合掌して優雅に一礼すると、
「貴殿を試させていただきます。出でよ、レーザービーム!」
 いきなり手から白光をほとばしらせました。少年は意表をつかれ、かろうじてその熱線をかわしました。跳ねた髪の一片が焼け焦げてはらりと落ちます。
「アデュー」
 司祭は高く手を掲げ、無数の魔光を続けざまに射ち込みました。しかしその光よりも速く少年は階段を駆け上がり、敵の白い衣を切り裂きました。絹が舞い、一滴の返り血が少年の頬を汚します。
「やったか……いや、入れ替り?!」
 司祭と思った姿は実は灰色の僧侶でした。眼鏡を捨て、氷の瞳を彼に据えると、
「ヒロを傷つけた。許さんぜよ」
 同じ熱光線で少年の足元を狙い撃ちます。少年は慌てて後ろへ跳んで避けました。
「くそ、どっちがどっちで……」
 左右の敵を見比べます。両者ははっしと手をつなぎ、天に向かって指を差し叫びました。
「ホワイトサンダー!」
「ブラックサンダー!」
 空から降った一対の稲妻が絡み合い、
「プリ○ュア・マーブル・スクリュー!!」
「そりゃ番組が違う!」
 少年は罵声を浴びせながら剣を抜きます。白と黒の電光が渦を巻いて彼に襲いかかりました。剣を正面に構え、必死でそれを受け止めると、
「ぬおおお!」
 力任せに押し返しました。電撃の奔流は威力を失い、そのまま煙になってしまいました。
「なんとしたこと! 我らふたりを退けるとは」
「報告せにゃ」
 司祭と僧侶は衣をひるがえし、階段のさらに上へと消えていきました。少年は息を切らして彼らを追いました。いつの間にか空は漆黒の闇となり、宝石のような満天の星が散りばめられました。永遠に続くかのように思われた階段の先にとうとう、曙のまばゆい光に包まれた頂きが見えてきました。