そんなことを考えつつ、服を脱いでいた時だった。
 ドアが開いて幸村が入ってきた。
「あれ? いたの?」
 幸村は目をぱちくりさせてそばに来ると、荷物を置いてのどかな調子で言った。
「梨奈さんたちとしゃべってて遅くなっちゃった。誘われちゃったよ。今度合宿に手伝いに来てくれたら、バーベキュー食べ放題だって。きみのことも誘ってって言われちゃった。なんか気に入られてるよ、真田」
「……咲坂先輩の、彼女の人か」
「そ。梨奈さんって去年の大学オープンの女子とミックスで優勝してるんだって。しかもさ、咲坂先輩と同じ法学部なのかと思ったけど、理工学部の化学科なんだってさ! 理系の女の人ってかっこいいよね」
 そんなことをしゃべりながらシューズを脱ぎ、ソックスをぽいと放り出して、床に脱いだものの山を作っている。俺は呆れながら、ちらっと幸村を盗み見た。こいつは人がいる前で堂々と裸になるのに慣れているらしい。なんというか、人を人とも思わないというか、俺の立場はどうなるんだ? 少しは遠慮してほしい。大体、ついこの間とんでもないことをとんでもない場所で俺に言ってきたのを忘れたのか? それとも俺を挑発してるのか?
「あ、言うの忘れてた! 真田、おめでとう」
 下着を下ろしかけながら祝福されても困る。俺は敵対的に「それはどうも」と答えた。幸村は屈託なく笑って、
「ほんと、さすが立海大付属を背負って立つ男。きみにはやられたよ……いや、違うか、僕がやったんだっけ? きみを」
と言いながら、シャワーブースに入ってカーテンを引いてしまった。俺はかちんときて、
「その話はやめろ!」
 と怒鳴った。水音とくすくす笑う声が聞こえた。