「あなた、かなり可愛いわね。学校でもてるんじゃない?」
「桑原ほどじゃないけど、一応」
 白で統一されたインテリアのリビングといい、ぴかぴかのシステムキッチンといい、家の中はさすがというか、何もかも外人サイズだ。ベッドみたいに広々した白いソファにちんまりはまりこんでいると、アネッサがホームメイドのサングリアを持ってきてくれた。
「ジャッキーの友達ってキュートな子多いわね。あそこの学校、お固い感じがするけど、案外そうでもないみたいね」
 アネッサは僕の隣に座って、グラスを掲げながら僕のことをのぞきこんだ。
「お人形さんみたいな顔してるじゃない? なんだか憎らしいわね、男の子のくせにこんなお肌すべすべで、プリティだなんて。若いっていいわね」
「……うん、僕、どっちかというと男にもてるから」
「あーら、そんなことじゃないかと思ってたわ。悪い子ね! 可愛い顔をして、大人を沢山だましてるのね」
 僕にさらに顔を近づけると、彼女はたっぷりのマスカラで縁取られたまつ毛でぱちんとウインクした。女性らしさの権化とでも言うべき、大きな鞠みたいな褐色のバストが目の前に豊かに盛り上がっている。僕はその見事な眺めを前にしてなんだか急に、みじめな気分になってしまった。確かに僕は何人かの大人にせこい商売をしたけど、所詮は中途半端な頭脳と肉体しか備わってない。この人のように完璧な成熟した女の色気というものを持ってたら、どんなことでも自由になるに違いないのに。男どもは彼女の前に膝を折り、彼女の施す恩賜を受けようと争うだろう。僕の身体なんてただちょっと可愛らしくて鑑賞向きであるにすぎず、グラマラスなアネッサのように彼らを迎え撃つには、あまりに頼りなくて弱々しい気がした。
「いいなあ…」
 僕は思わず本音を洩らした。お姉さんは僕が子供なりに素敵なおっぱいに賞賛の意を示したと思ってくれたらしく、優しく笑ってくれた。
「触ってもいいのよ」
 彼女は低い声でそう言ってグラスを置くと、僕の手をとってふくらみに導いた。さすがだよな、この落ち着きっぷり。
「僕があなたみたいだったらなあ」
 アネッサの胸を両手に納めて、僕がつぶやくと、彼女はちょっと眉をひそめた。
「まあ…。あなた、そういうふうになりたい子なの? ううん、誤解しないで、べつにそれが悪いって言ってるつもりはないのよ。友達にもいるわ」
「そういうのじゃないんだ。僕、好きな人がいて……」
 僕は何を言ってるんだろう。アネッサに触れていたら、やりきれない気持ちになった。