あいつの名前を出されて、僕は気が動転した。快楽に支配されて痺れはじめた頭に、ぴりぴりするような恥ずかしさが染み渡った。僕はそんなことしてない、そんなこと思ってない。そんなはしたないこと…だかれたい、なんて!
 抱かれたい…?
 あんなにかっこよくて強くて男前で、僕とは比べ物にならない、素敵な彼に、僕は…
 あのとき僕は、自分でも後で怖くなるくらい感じてた…あんなの初めてだ、あんなふうに熱くなって、溶けちゃうみたいにキモチよくて…
 いった後に僕のことを抱え寄せてくれてた、彼の荒い息遣いを思い出す。きみはあのとき、僕を突き放してもよかったんだ。殴り飛ばされてもいいようなことをしたのに、僕を抱き留めたままでいてくれたのは、なぜ?
 きみがほんの少しでも僕を、愛してくれたら、
 世界は変わるのに。
 電話が鳴った。自分の携帯の音だって気づくのに、10秒くらいかかった。
「あ!」
 僕は気づいて叫び、泣きながら懇願した。
「先生、電話に出させて…すごく大事な用が…」
「何が大事な用だ、この糞餓鬼めが。放っとけ」
「ほんとだよ、ほんとに大事な用なんだってば、おねが…」
「黙れ」
 先生は僕の口に自分のを突っ込んだ。僕は上と下の両方で辱められて、本当に発狂しそうになった。おかしくなっちゃいそうな震えが、身体の奥で僕をかき乱し、悶えさせる。また、電話が鳴ってる…きっと蓮二が真田に電話して、真田が「どういう事だ」って怒鳴り込んできたに違いない、きっと彼はすごく怒ってる…か、それとも、もしかしたらちょっとは、心配してるかもね……そうだったら、どんなにいいだろう。あの日のように、きみが助けに来てくれたら、どんなに幸せだろう。
 きみが僕の秘密を半分、持っていてくれるのは、ただの責任感と義憤からだけだって分かってるのに。
 電話が鳴り続けている。意識を手放しそうになりながら、彼のことを考えて僕は耐えた。想うだけなら僕の勝手だ。