「赤い瞳、俺はどうして生き返ったんだろうか?」
 参謀閣下は頬を赤らめながら尋ねました。赤い瞳は、ここぞとばかりに胸を張って言いました。
「それはですね、それは、オレがそのように望んだからです!」
「はああ?」
 黒い羽根の魔道師が間の抜けた声を出しましたが、赤い瞳は無視してそのまま話し続けました。
「参謀閣下、オレは、今はまだ皇帝に勝てません。いずれあいつを倒すけど、今はあなたがいてくれないと、オレはここを守りきる自信がないんです。だから……その人についてかないで、オレらの味方でいてほしいんです。そのためにオレにこうしろってことがあるんなら、します、なんでも…あの、一応、オレにできることなら…」
 そう釘をさしておかないと何かとんでもないことを要求されそうな気がしたので、赤い瞳は次第に弱気になりながら付け加えました。すると、参謀閣下はなんというか、とても不思議な顔をしました。お願い事をされているのにまるでなにか、自分が責められているかのような、戸惑って痛々しいほどの目つきになって、口をむすんだまま赤い瞳をじっと見ているのです。
(ねえ、聞いてるんスか?)
 赤い瞳は、もどかしくなりました。思わず参謀閣下の両腕をつかんで、
「いかないで! お願い、オレ、あなたが、あ?!?」
 叫びかけたとき、ぶったまげたことに、参謀閣下は赤い瞳のことをきゅっと胸に抱え寄せたのです。
「ええええええ?@%##!」
 日頃の彼とは別人のようになって、声を詰まらせながら魔道師は言いました。
「その声…ああ、お前だったんだね……俺に『それでいいの?』って言ってくれたのは」
 赤い瞳は抱き締められたまま呆然としました。この人がこんなふうに愛情深い態度を示すなどとは、欠片ほども予想していなかったのです。いとおしそうに、その茨の冠のようなくるくるした髪の毛を撫でながら、参謀閣下は詠嘆しました。
「誰にも必要とされていないと思った…だから、自分を消してしまってもいいと思ったんだ。でも、生き返ってみたら、とてももったいないことだと思う」
「な? だから、俺と川向こうに帰ってー」
「ダメっ!」
 それを聞くやいなや、赤い瞳は参謀閣下の首ったまにしがみついて怒鳴りました。
「この人はうちのなんだからっ! お前らのとこなんかに返すもんか」
「な、なにを小癪な…レンジはもともと、俺のパートナーなんだぞ」
「今は違うもんねーだ」
 言い争うふたりの間で参謀閣下はきまり悪そうにずっと目をぱちぱちさせていました。そして、空を見上げて小さくつぶやきました。
「なんてことだ…俺が姫様と同じ立場になってしまった」