「猫の姿でなくても、追い払いません。ご飯もあげますから、ここにいたらいいではないですか」
「……闇の者なのに?」
「これからもですか?」
 司祭が微笑むと、僧侶は顔を赤らめました。そして今さらですが自分がとんでもない暴挙に及んでいるのに気づいて、照れ隠しのように司祭を抱きしめました。
「なら、代わりにイイコトをしてやろう…」
「え? そ、それはっ、い、いけません! 神に仕える身でこんな、あ、だめですっ」
「ダメって言われると余計燃えるんじゃよ」
 口論しながらも結局、ふたりは親密になってしまいました。司祭は後で結構後悔するのですが、今度こそ叩き出そう、と思うたびに奴は猫に姿を変えてミウミウ言って甘え、ざらざらした舌でいっぱい舐めてくれるのでたまんなくて、ついつい許してしまうわけです。こうして布団と一緒にぽかぽかしている彼を見ているとなんとなく幸せを感じてしまうのは、やっぱり愛なのかしら、と思いながら司祭はまた、掃除を始めるのでした。


「なんかますます過激になってきたな…で、このお話は結局いったい、何が言いたいんスか?」
 読み終えると赤也は尋ねた。外で真田が例によって「仁王はどこで昼寝してるんだ! 探してこい!」とヒステリーを起こしている声が聞こえている。蓮司は腕組みしてしばらく考えた後で答えた。
「最初の相手はよく考えて選ぼう、ってことかな」
「いや、この人は、選ぶ余地なかったと思うんスけど…」
「お前もよく考えるようにね。まあ、若いうちは突っ走っても仕方ないとは思うけど」
 アンタと一個しか年違わないと思うけど…と言おうとしたが一応、先輩に敬意を表してやめておいた赤也は、なんとなくつぶやいてみた。
「愛って意外に、カン違いから生まれちゃうもんなんスかねえ?」
「かもね」
 目を見てクールに返されるとなんかどぎまぎしちゃうよな。そう思いながら赤也はとりあえず部室の掃除を始めるのだった。