「不思議な猫さんですね…どうやって、私の家がわかったのですか?」
「それはキサマの後をつけてきたから」
 猫が言いました。
 空間が歪むように引き伸ばされ、ぽんと弾けるような音とともにそこには、あの闇の教団の男が出現していました。司祭は心臓が止まるほど驚愕すると同時に、狭いベッドの中で壁際に押しつけられました。
「ど、動物変化…とは…!」
「俺の得意技じゃ」
 氷のような瞳を初めて熱っぽくきらめかせ、闇の教団の刺客は言いました。そして素早く司祭の上に馬乗りになると、
「命乞いするか?」
 冷たく光る刃を抜いて迫りました。
「なぜ……なぜ、どうしてですか。優しい猫さんだと、信じていたのに」
 司祭の口からは、場違いな言葉がこぼれ出しました。
「どうして…あの子たちを生かそうと……する人が、私たちを」
「猫は、夜の動物。もとより俺らの眷属じゃ」
 瞳に物騒な色を浮かべて、灰色の僧侶は獲物を構えます。
「だから光の者どもは甘いと言うんじゃ。さあ、命乞いせんと言うなら、望み通り死ねや」
「私は…私はそれでも信じます、闇と光は本来一体のもの。夜が来て、また朝が来るのが自然の摂理です。いつかはあなた方が我々を…受け入れてくださることを」
 青ざめながらも雄々しく司祭は返答します。すると、僧侶は激しく機嫌を損ねました。
「いつまでも、そんな戯言を…キサマらこそ、俺らを受け入れる気などないくせに」
「なにゆえにそう決めつけるのです。我々は理解しようとする努力を放棄していません」