天まで届く階段の途中に眼鏡の司祭と、氷の瞳の僧侶が一緒に住んでいる神殿があります。
 そこはいつも清潔に掃き清められ、塵一つ落ちていません。白い衣の司祭は大層きれい好きなのです。毎朝掃除を欠かさず、食事が済むとすぐに布団を干します。ところが、灰色の衣の僧侶は二度寝が大好きです。
「ニオ、起きてください。布団が干せません」
「……ああ?」
 ベッドの中でまるまっていた僧侶は、片目を開けてまたつむりました。
「布団を干すので起きなさいと言ってるんです」
「……にゃあ」
 僧侶は猫のように思いきり手足を伸ばすと、またまるまってしまいました。司祭は深くため息をついて、十字を切ると布団をぐぐっと引っ張りました。僧侶をくっつけたまま布団をずるずる引きずっていき、テラスに広げて干します。僧侶は布団にきゅっと抱きついたままです。
 ぽかぽかした日差しを浴びて、布団と一緒に干された僧侶は気持ちよさそうに眠り続けています。司祭は諦めたようにその姿を見つめ、かすかに微笑みました。


 眼鏡の司祭と僧侶はかつて仇敵どうしでした。
 闇の教団に属する僧侶と、光の聖職者協会から来た司祭は、どちらも組織に忠実なしもべでした。ただひとつの違いは、その信念。すべてを受け入れようとする日の光の神に対し、闇の守護神は己を信じる者以外を徹底的に排除します。いにしえからの長い間、闇を照らそうとする曙と暗い夜とは、暁のはざまでせめぎあうことを続けていました。