「ああ、姫さま、オレがもっと大人になったらきっと…」
 せつなさと愛おしさがこみ上げ、彼は思わずそれを握りしめてしまいました。心地よさがふんわり身体を包み、彼はいつしか一人遊びに熱中していました。
「おやおや」
 唐突に声がしました。赤い瞳はぎくりとして辺りを見回しました。竜の頭の宝杖を手にした魔道師が、柱の影からにやにやして見ています。
「あ、あっち行けよ、すけべ野郎」
「君だってのぞいていたくせに」
 魔道師は鼻で笑い、懐から鍵のかかった帳面を出してなにやら書き込みはじめました。
「データ帳につけとこうっと。赤い瞳の×××は××××……」
「ちょっと、やめてくださいよ、勝手に個人情報を流出させないでくださいッス! ちゅかその前に××××って、ウソだ! ウソだよ〜!」



「なんだ、この間のRPGの原作の続きか……」
 赤也は勝手にノートをぱらぱらめくって、つまらなさそうにつぶやいた。
「秘密の手帳を盗み見たな。貴様の脳に針を刺して記憶を抜くぞ」
 蓮司が入ってきて怖い顔をした。
「この針を延髄にこう、プスッと」
「それ、ストローじゃないスか」
 けらけら笑いながらページを繰っていた赤也は、途中でふーん、と目を凝らした。
「なんか、急にやらしい小説になった…」
「だから刺すぞ、こら」
「うわ、ちょっと、やめてくださいよ、勝手に記憶を盗まないでくださいッス……ちゅか、この、××××って、何スか? ねえ?」