「魚も美味しいんだよ。なんで嫌いなの?」
 弦一郎がつっこむと場が白けるので、僕が一応、ゆるめにフォローしてみました。
「えー、だって、魚って骨があるし」
「肉にも骨はあります」
「読めた。お前たち、要するに面倒なんだ」
 蓮司がにやっと笑って言い捨てました。僕と柳生くんも、すかさず顔を見合わせてうなずきました。
「お箸使って骨から身をはがすのが、めんどくさいんだね」
「箸の使えない方もいますしね」
 柳生くんの視線の先には、茶碗を左手に、右手にはフォークを持っているジャッカルがいます。
「し、仕方ないだろ、うちはこういう家なんだ!」
「赤也も、いつも思ってたんだけど、箸の持ち方おかしいもんな」
「え! これ、お、おかしいッスか?」
「うん、そんな下のほう握って食べる人いないよ」
 慌てている赤也の隣で雅治がこっそり、箸を置いてフォークに持ち替えました。
「箸使うのが下手、だから魚が嫌い、そして肉が好き。これが真相だ」
「……真田副部長、なんとか言ってやってくださいッス、肉派の代表として」
 こういう時だけ弦一郎に頼る赤也が悲痛な声をあげ、弦一郎は悠然として口を開きました。
「俺は正しい箸の持ち方を会得している、そして肉が好きだが、何か問題あるか」
「でも、弦一郎って割り箸割るのへただよね」
 つっこむチャンスを狙っていた僕は、ここぞとばかりにスマッシュを入れました。みんなの目が弦一郎の持っている箸に集中しました。僕は弦一郎とよく一緒にごはんを食べてるので知ってますが、彼は割り箸を真ん中から均等に割れないのです。多分、利き手のほうが極端に力が強いのが原因なんだろうけど、結構かっこ悪いです。
 弦一郎は(あとで2、3回殺す)という目で僕を見ましたが僕はつっこめたので満足です。