「あー、それ昨日新聞の広告に入ってた」
「うそマジ! ちょっと、行こうよそれ!」
 ブンちゃんが躍り上がって言います。
「肉くいてえ! 上カルビだけ10皿くらい食いてーよ。10皿でも3000円だろ、いいじゃん」
「俺はたん塩がええな、ネギのっけるやつ、あれ好きじゃ」
「えー、オレ、ネギやだ! ハラミがいい!」
「豚トロもいいよなあ」
「あ、いいね、もう最高。ユッケも食いたい!」
 肉の話だけでここまで盛り上がれるものなのか。僕たち魚派はいささかげんなりします。蓮司なんか「カルビ10皿」と聞いただけで胸やけしそうと思っているに違いありません。
「みなさん、肉も大変結構ですが、少し栄養バランスを考えて食事したほうがよろしいのでは」
「特にそこのネギが嫌いなお子様」
 柳生くんと蓮司が連係してつっこみました。ネギが嫌いなお子様は肉派からもガンガンつっこまれています。可愛い子には旅をさせろ、じゃなくて、つっこみを入れろというのがうちのモットーなのです。まあ、これが、先輩の愛情というやつです。
「思うに肉が好きとか言ってるうちは、子供だね」
「まさしく。やや原始的ともいえます」
「いま何つった?」
「一部差別的発言があったよな」
「みくがふきでなにがはふいんスか〜!」
「口に物を入れたまま話をするな!」
 弦一郎がファイナルつっこみをかましました。可哀想な赤也は絶対「仁王先輩もさっきやってたのに…」と思っている顔です。