練習で遅くなった時にみんなでよく行く店の日替わり定食が、メインの料理を肉にするか魚にするか選べるんですけど、うちではこれがわりとまっぷたつに分かれます。
 僕は、もう断然魚派です。秋のさんまなんか大好き。あじの干物でもいいな。もうちょっとお上品な西京焼きみたいなのも好き。もちろんムニエルとかフライとかの洋風なのもいいよね。蓮司と柳生くんも魚派なので、僕たち3人は店に入るときからメニューを見て「今日の日替わりはさばの塩焼きだって〜」ってニコニコしちゃったりします。
 弦一郎と雅冶とジャッカルと赤也は、断然肉派です。どんな肉であろうと魚より肉が好きなのです。肉なら何でもいいのか?と思うこともたまにあります。それほどまでに奴らは肉が好きなのです。なんというか、むやみに男らしい人たちです。
 ちなみに、ブンちゃんはどっちもいい派なので、いつも最後までメニューが決まらなくて「両方食いたい!」と身もだえしていて、僕が勝手にどっちかに決めます。


 僕はあまり関心がないのですが、肉派の人たちは「焼肉」という言葉にやたら反応します。
「昨日、家で焼肉行ったんスけどぉー、すげえ食っちゃって、ハラがまじヤバかったっす」
 チーズハンバーグをがつがつ食いながら赤也が言っています。この子の「すげえ食っちゃって」はまだまだ大したことないです。ブンちゃんなんか放っておくと、いつの間にかごはんを4杯くらいおかわりしていて、おかずがないと言ってみんなの残した味付け海苔や漬物を漁って回るので合宿に行ったとき先輩に叱られました。
「いいよなあ焼肉、最近行ってないんだ。行きたいなあ…」
 ジャッカルが故郷を懐かしむような目をしてつぶやきました。彼はなんといっても半分ブラジリアンですから、肉なしでは生きていけないんだろうと思います。
「そーいや、いま、『牛丸』でオール300円キャンペーンみたいのやっとる」
 雅治がごはんを口に入れたままもそもそしゃべりました。