【本作は、まりかがこのサイトを始めたばかりの時期に練習として書いてみてそのまま放置したものです。まだ本誌で関東大会だった頃の作品なので、勝手にブンちゃんとゆっきーをクラスメイトにしました。】
オレさ、今日は日直で、プリントとか職員室に取りにきてんの。
めんどいけど職員室の「3年」って書いた棚のとこにどさっと置いてある、学年だよりとかそういうのを、クラスの人数分数えて持ってかなきゃなんない。棚のとこにはクラスごとの人数を、黒と赤のペンで書いた表がある。3年1組、男19、女17、みたいなね。
オレのクラスは男子20人の、女子18人で、全部で38人。
でも、学校に来てない奴がひとりいる。
3年になってクラス替えのとき、幸村といっしょのクラスになったからオレ、すっげえ嬉しかったんよね。
みんな幸村と同じクラスになりたいんだけど、オレがそのラッキーっ子ちゃんに当選したんだから! 赤也まで「丸井先輩、部長と同じクラスなんていーな」なんて言っててさあ、お前学年が違うだろってんの。
真田とかさ、口には出さないけどあれ絶対、超くやしいって思ってたね、内心。
でも、最初は浮かれてたんだけど、柳が「じゃあブン太が幸村のプリントとかそういうの、持ってく係になるのかな?」って言って、そんでオレ、そだった…って思い出しちゃった。
幸村はずっと学校を休んでるんだ。病気で入院してるの。そいでもって、いつまた学校に来れるかわかんないの。もしかしたら、ずーっと来れないかもしんないの。
ほんとにもしかしたら、二度と来れないかもしんないの。
オレは学年だよりをクラスに持って帰って、ホームルームの前にみんなに配る。
前から回せって言って列ごとに渡して、そんで窓ぎわの一番前の幸村の机をあけて、中にプリントを入れる。数学のミニテストとか国語の宿題用の原稿用紙とか、遠足の実施要綱とか図書館からのお知らせとか、いろんなものがいっぱい入ってる。
ひきこもりで登校拒否の奴とかいると、よく机にゴミとか入れられちゃうじゃん? でもうちのクラスは幸村には絶対、そういうことしない。みんなあいつが好きだし、早く学校に来れるといいなって思ってる。たまに女子が遠足で撮った写真とかに手紙を添えて机に入れる。ピンクの封筒に入ってて、なんかラブいこと書いてあんのかもしれない。幸村は1年のころからモテるからなー。まあ、モテるっちゅーか、女子の中に入ってても違和感ないんだよね。あいつ優しいし、女子とも普通にしゃべってわいわい言って仲良くしてたし、女子の恋バナとか普通に相談に乗ったりもしてたっけ。
机にたまったそういうものを一週間に一度、真田が病院に持ってってあげてる。
うん、オレじゃねえんだ。真田が持ってってあげるんだ。