それから俺達は、結局、三時間掛けて冬の寒い夜を学校まで泣きながら歩いて帰った。
 途中、泣きながら歩く俺達に酔っ払ったおやじ達が声を掛けてきた。
「どーしたんだ、お前達、男は簡単に泣くもんじゃないぞ〜」
 巨大なスポーツバックを抱えて泣きながら歩く俺達は、部活の試合に負けたのだろう、程度に世間からは映っていただろう。
「うるせぇ!!!ほっとけ!!今、友達がマジで死にそうなんだよ!!!」
 やけになった丸井が怒鳴り返す。
 「そうか……辛いなぁ。人生は辛いことの連続だぞ。泣いていちゃいかん」
「うるせー!!!ほっとけって言ってるだろ!! 今は泣きたいんだよ!!」
 赤也が怒鳴り返す。
 その日ばかりは、部員の非礼を叱る気持ちにもなれなかった。



 翌日、丸井と赤也は目を泣き腫らした上に、俺に殴られた顔を派手に腫らし、学校に現れた。
 その他のメンバーも漏れなく一晩泣き腫らした目を赤くしていた。
 仁王は、サングラスを掛けて登校し、教師に怒られても、ファッションだと言い張り、絶対そのサングラスを外さなかった。

 幸村の様子を聞くために、朝夕、頭を下げるのは嫌だけど、幸村のクラスの担任に幸村の様子を聞きに行った。
「まだ連絡がないから、多分、大丈夫じゃないか?」
 と、奴はふざけたことを言ったので、俺が思わず殴りかかりそうになったのを、俺の衝動にとっさに気づいた隣にいた柳に止められて以降、俺以外の誰かが当番で聞きに行くようになった。

 大した情報は全く集まらなかった。かと言って、今、病院や自宅に確認の電話を入れるのも、タイミング的に憚られる。
「幸村はきっと大丈夫だ」
 誰かのその言葉にみんなが頷く。
 俺達は祈るような気持ちで、心臓に悪い一週間を過ごした。
 恐怖を振り払うためのように、ただ無我夢中で部活にとにかく打ち込んだ。

 一週間が過ぎて、「峠は越して、病状が安定したらしい」と幸村の担任から聞き、抱き合って泣いて喜んだ。
 結果的にその一件は、俺達を強く結束させた。