明かりの無い暗い神社の賽銭箱の前で、大きなスポーツバックの中から賽銭のための財布を手探りで取り出すと、丸井は財布の口を開け、逆さにした。
 チャリチャリチャリーンという景気の良い音がした。そして札入れの方に入っていた数枚のお札も取り出し、賽銭箱の上で手を離す。お札はひらひらと落ちて行った。
「お前、帰りの電車賃…!!!」
「歩いて帰る!!!」
「歩いて帰るってここから結構あるぞ」
「良いの!!これくらいしか今、俺に出来ることねーんだもん!!!」
 隣にいた赤也も無言で、同じように財布を逆さにして、賽銭箱に有り金を投げ入れる。
「赤也!!」
 心配してやっているのに、赤也は俺にそっぽを向く。
 困ったような顔で見ていた桑原も、納得したように頷いて、カバンの中から再度、財布を取り出し、中身を全部賽銭箱に入れた。
 いつも何を考えているのか分からない仁王までが、財布の有り金をすべて賽銭箱に突っ込むと、いつも冷静な柳生と柳まで自分の財布の中身をすべて賽銭箱に投げ入れる。
 そして全員が一列に並び、俺を恨めしそうな顔でじっと見つめる。
 俺はいつものお参りと同じように、手には五円玉を握っていた。
「………ご縁なんか今あってもしょーがねーじゃん」
 それを見て、恨めしそうにブン太が呟く。
 俺はため息をついて、自分の財布の中身をすべて、賽銭箱に突っ込んだ。
「さすが部長!!!」
 調子の良い丸井の声が上がる。おだてられても嬉しくもなんともなかった。


 パンと大きく手を鳴らす。
「神様、どーか幸村を助けてください!!!」
 丸井が大声で、神様にお願いする。
 俺達は試合みたいに一列になって深々と何時までも頭を下げる。