「で、どうして部長は幸村先輩なんですか?」
「真田って、すぐに手が出るだろ?なんでも暴力で解決する所があるじゃない?」
 幸村の言葉にうんうんと大きく頷く。
 「後輩に容赦なくてさ、俺はあんまり暴力で解決するのって好きじゃないから、勝負したんだ。真田と。俺が勝ったら、俺が部長だ、もう後輩には手を出すなって」
「そ、それでテニスで勝ったんですか?」
「ううん。テニスじゃない。
 取っ組み合いの喧嘩をして俺が勝った」
 幸村がさらっと答える。
 「えーっっっ?」
 赤也が派手に驚く。
 あの、鍛えに鍛えている真田と、線の細い幸村では体格に随分差がある。取っ組み合いの喧嘩をして、幸村が勝ったなんてにわかには信じられない話だ。
 「す、すげー。ほ、ほんとですか?」
「実話だよ。それで俺が部長。真田が副部長」
「す、すげー!!!!」
 赤也が感動して叫ぶ。
 「お、俺、尊敬し直しました!!!幸村部長!!!」
「あはははは。
 真田の奴、俺がいない間にまた先輩風吹かして好き放題してるんだろ?今度、真田が来た時、注意しておくから」
「お、お願いします!!!」
「任せて」
 幸村が余裕の表情で、微笑む。



 この話は実話だが、彼らが小等部の時のお話である。
 幼稚園から一貫教育の立海大付属中学テニス部では、小等部の時にテニス部部長だった生徒が、中等部でも部長になるのが慣例だ。
 そんな訳で、部長が幸村。副部長は真田なのである。

 体格の近かった小学生の時とは違い、今、取っ組み合いの喧嘩をすれば、勝つのは間違いなく真田だろう。
 それでも小等部の時の一件依頼、真田は幸村には頭が上がらない。
 人間関係の上下というものは、割とシンプルな原因で決まってしまうものである。