「ずっと前から気になってたんすけど……」
 たまたま、用事があり幸村の入院している病院の近くに来ていた立海大付属テニス部の二年生で唯一のレギュラーである切原赤也は、テニス部部長の幸村の病室に、見舞いをかねて立ち寄った。
「なに?」
「真田副部長って、中学テニス界で自他ともに認める"皇帝"な訳でしょ?
 なのになんで、部長は幸村先輩で、真田先輩は副部長なんですか?」
 幸村が部活に顔を出せなくなり、真田の暴走を止めるものが部内にいなくなり、一番に割を食っている赤也はため息交じりに呟く。
 真田とは違い、幸村は後輩に優しくて人気がある。幸村に部活のことを聞かれれば、どうしても副部長の横暴の愚痴ばかりになる赤也だった。
「ふふふふふふ」
 それを聞いた、幸村が楽しそうに笑う。
「あ、真田副部長より、幸村部長が弱いって言ってる訳じゃないっすよ」
 赤也は慌てて弁解する。
 赤也は他人がどう思うかなどを考慮せず思ったことをずけずけ口にし、敵を増やすタイプだが、さすがに優しく何時も自分を庇ってくれる幸村には嫌われたくないと思っている。
 赤也は真田と幸村の直接対決を見たことがないので、真田と幸村のどちらがテニスで勝つのか、分からない。
 真田はとにかくパワーで押し切る強いテニスだが、幸村にはテニスが上手い人という印象があった。
「あぁ良いよ。気にしないで。
 良く聞かれるんだ。みんな、不思議に思ってるんだろうね」
 幸村は楽しそうに答える。