呪われた地、舞浜。住民の皆さんには申し訳ないが、二度と訪れる日が来ないことを心から祈りたい。
 しかし、試練に耐えることも己を鍛えるためには必要だ。今日一日が無事に過ぎたことを俺は神に感謝している。この修行も将来、何かの役には立つだろう。……立つのか? できればそれを確かめる機会は永遠に来ないでほしい。
 俺はこの夢と魔法の王国とやらを侮っていた。このような恐ろしい場所が日本に存在していたとは…。それを知ることができただけでも、良しとしよう。
 いや、そんなことより、幸村が喜んでいるのだから良いではないか。こんなに嬉しそうな幸村は初めて見るかもしれない。いや…こいつが、こういうところでこんなに喜ぶとは、思わなかった…。幸村はさまざまな意味で本当に、本当にたいした奴なのだなと、俺は認識を新たにした。そして、正直に言うが多少なりとも自信を失った…。俺は本当にこいつとこの先もずっとつきあっていけるのだろうか……? 仁王と柳生を見ていて思ったが、あいつらのように俺達はちゃんと共存し合っていけるのかどうか、はなはだ自信がなくなってきた。
 ……とりあえず、今はそのことを考えるのは止そう。あと数十分電車に乗っていれば家に帰れるはずだ。そういえば、幸村の土産物を大量に持たされていたので自分の土産を買うのを忘れてしまったが、そんなことはもうどうでもいい。帰ったら早く寝よう。
 俺の肩にもたれている幸村は、幸福そうな顔で寝入っている。それを見ると俺も幸せな気分になった…が、少し重い。桑原と丸井は頭を寄せあって2人とも爆睡している。あれはあれで幸せそうだ。
 向かい側に座っている蓮二と目が合うと、(おたがい難儀だな)と言いたげに笑って目配せしてきた。確かにな…。しかし、お前はいいじゃないか! 赤也は大して重くはないだろう! まったく、どいつもこいつも、たるんどる。