比呂士にも写真撮ってあげるよって言おうとしたんだけど、いつの間にか雅治がどこかへ行方をくらましていたので、また後でということにした。黙ってどこへ行ってしまったんだろう。だけど置いてきぼりにされても全く動じていない比呂士はまったく偉いと思う。雅治のそういうのにもう、慣れているんだなあ…。
 帰りの待ち合わせ時間と場所を決めると、ブン太とジャッカルはファストパスをゲットしに速攻旅立ってしまい、精市はバケツに入ってるポップコーンが欲しいと言い張って弦一郎を連れてそっちへ行ってしまった。なにも朝からあれをずっとぶら下げてなくても…。
 赤也は大きな目を輝かせて俺を見上げて「柳さん、何に乗りたい?」と尋ねる。なんとしても自分が「エスコートする側」になりたいのだろう。多分俺が「お前の好きなのでいいよ」と答えるとへそを曲げてしまうので、俺は少し考えて「じゃあ、スプラッシュマウンテン」と赤也の好きそうなところを答えた。奴は喜んで「行こ行こ!」と俺を引っ張って歩き出したが、どうも逆方向へ向かっている気がする…。
 トゥーンタウンに着いてしまった。赤也は「あれー?」とつぶやきながら一生懸命に案内図をひっくり返して眺めている。いたたまれないので、俺は飲み物が欲しくなったふりをして休むことを提案し、その後さりげなく反対方向へ赤也を誘導して、つつがなくクリッターカントリーに着いた。途中でブン太とジャッカルが向こうから猛スピードで走ってきて「次はハニーハント!今日は、3回は乗るもんね!」とすれ違いざまに叫んでいった。元気だ…。
 ああ、赤也、ここまで来てどうしてまた違う方向へ行くんだ、目の前に看板があるのに…。気づかないふりを続けるのも結構疲れるな…でも、あの子の成長のためだ、今日は我慢しよう。
 ……赤也、スプラッシュマウンテンは後でいいから、あれ乗ろう、あれ。何なのかよくわからないけどちょうどそこにあるから。